2007/10/09

RadioSoundPainting 200710

Radio Sound Paintingのブログに10月放送分のプレイリストを掲載しました。


Usual Morning Sun - DJ Amagumo

Easelのブレイクビーツ・コンピレーション、「Beats Architecture」の中からDJ雨雲の曲。日光浴のような音のシャワー。体を温めてくれる人肌のサンプリング・ミュージック。平凡な日々のサプリメント。オープニングに合うなと思ってセレクトしました。こういったメロウネス、今までもよくあったようで、やっぱり2000年以降の音の選び方、切り方です。EaselからのReminderの新作、前作の「Now I Disappear」や新作の「Days Of Awe」のようなこの人独自のダブは耳に残りますが、今回は紹介できず。

The People - Common Feat. Dwele

以前にRSPでも紹介したリリー・アレンとやった「Drivin' Me Wild」、ジェイディーのトラックを使った「So Far To Go」と悩んで、この曲に。コモンはまったくズルイです。コアなリスナーからのプロップもしっかりゲットしながら、商業的にも成功しているという理想的なスタンス。カニエ・ウエストのプロダクションは格段によくなっていて、声ネタのイン/アウトの配置とタイミングが素晴らしい。ほとんどの曲でクレジットされているキーボーディストの力も大きいのではと推測(カニエの本人名義のアルバムでは、ミュージシャンの数もビックリするくらい多く、潤沢な予算を使って贅沢なことやってます)。ブレイクビーツの骨格は残しながらポップミュージックに寄り添うという最良の例でしょう。

Only For U - Soloal One

オリーブオイルの新作は、前作より意図的にトリッキーで複雑なプログラミングをやめて、もっと太いストレートな方向に行こうとしているのがわかります。エレクトロニックな曲は、往年のエイフェックスやミュージックを聴いているような錯覚に陥りました(ごめんなさい)。渋谷FM制作の栗田さんが「こういうブレイクビーツがもっと聴かれるようになればいいのに」と言ってくれて、昔からこんな曲ばかりを飽きもせずにかけてきた自分って・・・とやるせなくなったり励まされたりしました。

Beats Mistake - Kim Hiorthoy

デザイナーが作るグラフィカルな宅録ミュージック。と、言い切ってしまいましょう。この曲は特にかわいらしくスリリングな展開で、タイトルに偽りなし。ミステイクを曲の中に引き入れられるかどうかは、その人の器です。そういう豊かさを持った佳曲です。

40 Seconds (Dusk) - Yuji Oniki

前から紹介したかったオニキさん。なんとも大らかな叙情性が魅力です。オープンにチューニングされたアコギの響きはエバーグリーン(もしかして死語)です。勝井佑二さんのバイオリンも効果的です。アメリカ育ちの日本人が持つストレンジャーな視点があぶりだされているような気がしますが、それは後づけでしょう。こういうオーセンティックな風味の曲が自然に生まれてくるのもパラレル・ワールドな2000年代だなと思うわけです。

The Big Vacation - The Red Krayola With Art & Language

レッド・クレイオラの新作は思いのほかポップで聴きやすく、シカゴ勢のバックアップも相変わらず見事です。女性ヴォーカルのやわらかさが沁みます。この力のヌケ具合は学びたいところ。この曲や「Forty Thousand Words On A Chair」にはラヴィン・スプーンフルみたいなトボけたレイドバック感が漂っていて、グリニッジ・ヴィレッジ・フォークという忘れかけていた言葉を思い出しました。こういう小難しいことを言うオジイサンにはいつまでも元気でいてほしいものです。

Body Snatchers - Harry Hosono & The World Shyness

RSPで最もオンエアされているアーティストのひとり、ホソノさんの新作です。UAとのデュエットや往年のファンにはなつかしい「スポーツマン」と迷って、一番意外だったこのセルフカバーをピックアップしました。あのレトロ・フューチャーなやりすぎのエレクトロ・ヒップホップがフォークに化けています。何の違和感もないところが恐ろしい。原曲が収録されている一般的には評価の低い(?)「SFX」、個人的には思い出深いアルバムです。83、84年頃のあの空気、なんだったんでしょう。そんなどうでもいいノスタルジーは明後日にうっちゃらかって、最近のUAをプロデュースしている内橋和久さんのプロダクションがとても好きであることを告白します。

A Beautiful War - Robert Wyatt

脱帽です。おそらく最近聴いたアルバムの中で最もグッときた素晴らしい一枚でした。ワイアットは世界一の宅録マスターだと勝手に思っています。インティメイトな空気に込めた計り知れないエモーションの容量。この曲はイーノとの合作で、タイトルと裏腹にどこまでも牧歌的で(あ、禁断の言葉を使ってしまった)「I'll be free」という言葉が切ない。ロキシー・ミュージックを思わせる(フィル・マンザネラが関わっているので当たり前か)「You You」のハーモニーとコードの流れが一番のお気に入りですが、最後のスパニッシュの曲も目の前の景色を突き破るアンビバレントな破壊力があります。あらゆるスタイルがコピーされるのに、誰もワイアットのような深さとテンションに到達できない。なぜなんだろうと考えないと、ただ偉人を称揚するだけで終わってしまいます。その人の思想が政治的かどうかは問題ではなく、音楽そのものが構造としてエクスキューズになっている気がします。とにかく、小賢しさとは最も遠い音楽です。

November - Yossy Little Noise Weaver

元デタミネーションズのメンバーによる、優れたミュージシャンシップにあふれた完成度と自由度の高い音楽です。しっとりしたダブのコレを選びましたが、ジャッキー・ミトゥの「Oboe」の秀逸なカバー(原曲の朗らかさが完璧に再現されている)、ニューウェイビーな女性ヴォーカル入りの「Room」とも迷いました。宅録的なチープな打ち込みの音色と音場感、そこはかとないユーモア。きわめてラジオ・フレンドリーでもあり、6畳の狭いリビングで日本人が培ってきた精神性みたいなものともちょっとだけ関係あるのかもしれません。ないのかもしれません。結局、自分がそういう音楽にどうしても惹かれてしまうということなのかもしれません。なかなか自身の嗜好からは逃れられません。惰性ではないと信じたいのですが。

Best In Me feat.Yukalicious - Masaki Sakamoto

この人の別名儀の処女作はありがちなエレクトロニカのひとつにしか聞こえず、こんなに才能ある人だとは気づけませんでした(失礼)。アトムハートとの合作はあえて避けて、耳通りのよいヴォーカル曲を選びました。エレクトロニックなトラックに大人っぽいユカリシャスの声というのがありそうでない感じです。Yossy Little Noise Weaverとも感触が近いので並べてみました。こういう楽曲をただセンスがいいとかオシャレとかだけ称していては先に進めないので、それにふさわしい言葉を与えてあげないとと思います。ライナーノーツで岡村詩野さんがエリアーデの名前を挙げて、坂本昌己さんの音楽をシャーマニズム、アニミズムととらえて書いていたのにドキッとしました。

Bird Flu / Boyz / XR2 / World Town / Big Branch (Edit) - M.I.A.

クールダウンしていった後に、M.I.A.です。新しいです。個人的に、いま、一番血が騒ぎ肉踊る音楽です。リズムの面白い部分をブツ切りエディットしてみました。M.I.A.については、後日、詳しく書きたいと思います。

Polyrhythm / Seventh Heaven (Edit) - Perfume

渋谷FMでかけていいのかなとためらいつつも、オフザケでなくドマジメにかけました(インスト部分を多めにエディットしてあります)。「Polyrhythm」はごく一部だけれどポリリズムを用いたり、メロディやフックの組み立ても実に計算されていて、中田ヤスタカの職人的なプロデュースワークがうかがえる楽曲です。リリックもエコロジーを引用しながら、繰り返すことの切なさと愚かしさ、生きることは繰り返しであるという誰もが逃れられない現実のありようをうまく言い当てています(ちょっとホメ過ぎか?)。お茶の間で聴くべきポップスとしては先鋭的であり、そして、ポップミュージックの構造の中でしかなしえない「いま」の風景があります。渋谷センター街で女子のざわめきをサンプリングして、というようなとってつけた時代感(そういうものも好きですが)とはまったくベクトルが違うところがいいのです。「Seventh Heaven」はエンディングに似合う曲調だったのでくっつけてみました。もちろん、ラリー・レヴァンとグウェン・ガスリーによる至高の名曲「Seventh Heaven」とはなんら関係ありません・・・。

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