2007/10/25

Perfume

「Chocorate Disco」と「Polyrhythm」のトラック・メイキングについて、推測も含め分析してみました。

「Chocorate Disco」は、サビに至るまでのAメロ〜Bメロ、「チョコレート・ディスコ」と連呼するCメロ(サビ1)と「ディスコ・・・チョコレート」と連呼するDメロ(サビ2)の4パートで構成されています。2パートあるサビはシンプルなリフレインながら巧みにアレンジされ、飽きない作りになっています。ポイントは、2分38秒あたりに用意されたDメロのバリエーションでありブリッジでもある箇所で、それまでの能天気な歌謡ディスコを裏切るように、シンセ・ストリングスの泣きのコードがグッとせり上がってくるところです(ギターが控えめな音量でその効果を補強)。

このシンセはイントロ直後のCメロでも鳴っていますが、その時はオケの一部なのであまり目立たず、この劇的なターニングポイントにおける単独使用で景色が一変します。オケの一部を抜く手法はダブ〜ダンス・トラックでは常套手段です。これ以降はマイナー調のコード進行を多用してクライマックスを盛り上げています。前半までとはトラックの印象がガラッと変わってしまうのです。この後半をもっと伸ばして、エクステンデッド・ミックスにしたいと思うのはきっと僕だけではないでしょう。

「Polyrhythm」はこの手法を発展させ、バックトラック全編に渡って、空間を埋め尽くす白玉シンセ・ストリングスの嵐になっています。これってやり方次第でベタッとしたメリハリのないトラックになりがちだと思うのですが、洗練されたコード進行とメロディの良さ、ダフト・パンク譲りの自己主張するベース、お題目のポリリズムを曲のアクセントとして配することで、単調さから逃れています。Aメロ〜Bメロ(サビ1)〜Cメロ(サビ2、Bメロの変形)〜Dメロ(ポリリズム・パート)〜Aメロ〜Bメロ〜コーダ(Cメロ+Dメロ、ポリリズム・パート)という構成でより複雑です。実質はAメロとBメロしかないとも言えます。

Aメロ〜Bメロは計2回繰り返されるのですが、微妙にメロディの節回しを変えていることです。一回目のBメロでは三度目の「繰り返す」だけが頭の音程が高くなっていて、二回目のBメロでは全部同じです。一回目と二回目のAメロでは、さらに多くの変化があり、このへんが隠れたフックになっているのではないでしょうか。おそらく、ヴォーカルを録った後で(ボコーダー効果はもちろんのこと)音程を含めたエディットをかなり周到に試している気がします。ポリリズムのパートに耳が引かれがちですが、メロディの起伏もこの曲のチャームなのではないかと思います。

この2曲は制作時期が近いこともあって兄弟のような関係で、「テクノポップ」三部作から一歩踏み出したハウシーな意欲作です。ボトムが強化されたとかそういうことじゃなく、よりミニマルな楽曲構造が本来のハウスに近づいたという気がします。特に、「Polyrhythm」に漂う無常感、時間感覚・歴史感覚が融解するようなスケール感は、あくまでポップスの作法で(広義の)ミニマル・ミュージックのソレに近づいていると無茶を言ってしまいたい、そんな欲望にかられます。

「クイック・ジャパン」のPerfume特集を読むと、Perfumeがこうなったのは偶然が重なった結果であり、だからこそ、予定調和ではないエアポケット的な存在になりえたのではないかと思います。

リンク:「RadioSoundPainting 200710」

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