2009/03/29

The Secret Life Of Plants

- Cabaret Songs Ver.2 -

Cafe De Flore (Trio Reprise) - Matthew Herbert
India Song (Edit) - Kip Hanrahan
Quiet Dawn (Edit) - Archie Shepp
Brother Where Are You (Matthew Herbert Remix) - Oscar Brown Jr
Talk To Me (Edit) - Jill Scott
Quinton's On The Way (Skit) (Edit) - The Pharcyde
Poetry feat. Q-Tip, Erykah Badu & Meshell Ndegeocello - RH Factor
Distant Land (Hip Hop Drum Mix) - Madlib
Oblighetto (Brother Jack McDuff) - J Dilla
Mtume's Song - The Eddie Prince Fusion Band
Trouble Child - Joni Mitchell
Green Eyes (Edit) - Erykah Badu
Daylight - Ramp
Love In Outer Space - Sun Ra
Crepuscule With Nellie - Thelonious Monk Quartet
Outro - Madlib

ジャズドラマーの若い友人用に作ったコンピ。僕はNervyという美容室に通っているのだが(ありがたいことに今時ワンコインで坊主にしてくれる)、そこのオーナー(Lady Kさん)と先日話しをしていて、彼女がQ-Tipのライヴがアットホームな雰囲気でとてもよかった(とはいえ、懐古的というよりQ-Tip自身が上手に年を重ねてきてエンターテイナーとして成長していた)と話していて、ああやはり行っておくべきだったと思った。もう何年前になるだろう、90年代半ばにア・トライヴ・コールド・クエストとファーサイドが渋谷On AIr Eastでやったライヴ、僕もLady Kさんも同じ場所に居合わせたのだった(そのときは知り合いでもなんでもなかったのだが)。雪の日で、だからかとても鮮明に覚えている。ネイティヴ・タンが台頭して元気がよかった頃。



いとうせいこうさんのブログを読んで、スティーヴィー・ワンダーがサントラを手がけた植物を主題にした幻のドキュメンタリー映画『Journey Through The Secret Life Of Plants』がYouTubeにアップされてるのを知る。まだ全部観れてないがこれはスゴイ代物。70年代でなければ作れなかったであろうアウラに満ちている(タイム・ラプスも使われている!)。『Journey Through The Secret Life Of Plants』は僕も愛聴盤で、収録曲の「Come Back As A Flower」を妹の結婚式のBGMに使わせてもらったこともある(笑)。おそらくスティーヴィーの脂が最も乗っていた時期で、なおかつ黒人音楽のフォーマットから最も遠く離れた作品で、そのアウェイぶりは「愛の園 (AI NO SONO)」という西城秀樹もカヴァーした珍曲の存在でもわかるというもの。



アレンジは坂本龍一。メロディだけ聴いてもスティーヴィーとはにわかにわからないのでは。

2009/3/26|readymade by いとうせいこう
 

2009/03/28

ブックマーク中毒者の戯れ言

日々ノートブックに向かってる時間の結構な割合をブックマークをつけることに割いている。ブクマ猿かよ俺は、と思うが仕方がないのだ。

Netscapeというブラウザのブックマーク機能をコツコツ単独に使うしかなかった原始時代からすると(まだその時のブックマーク群はHTMLで保存してある、もう見ることもないだろうし大半はリンク切れだろう)、ソーシャルブックマークやRSSリーダーなどFlashやJavascriptやAjaxが実装されたウェブサーヴィス百花繚乱時代のいまは隔世の感がある。

閑話休題。NetscapeにしろInternet Explorerにしろ、初期のブラウザの名前にはネットサーフィン(死語)=ネットという大海原を航海するというメタファーが込められていたと思う。Netscapeのアイコンは灯台でIEのアイコンはグルグル回る地球。インターネットが物珍しかった時代はそれでよくて、ブラウザがなにをする道具かをユーザに一発でわからせる必要があった。最近のブラウザはそういう第一世代のミッションから解放されて、Firefox、Safari、Opera、Chromeとより自由なネーミングで身軽になってるなぁと思う(MacだとiCabやShiiraも一時期使用していた。いまはFirefoxがメインでSafariがサブ)。

効率よく情報をたぐり寄せるという意味ではブックマーク環境は昔よりはるかに便利になった。とはいえ、ブクマにかける時間的コストは昔から変わってないというか、むしろ増えてる? 扱う情報量が10年前にくらべ数百倍になってるのに、人間の脳は大して進化してないというジレンマ(参考)。


そんなわけで、時間は増えませんから、下記のものはほぼ完全にやめてしまいました。

* 企業などのメールマガジンの購読
* 各種ブログの定期巡回
* ニュースサイトの定期巡回
* RSSリーダーでニュースを読む
* mixiで日記を書く
* 新聞の購読とスクラップ
* Podcastで音楽番組を購読

一方で下記のものを積極的にはじめました。

* ブログを書く
* tumblrでreblog
* twitterでぼやく


keep looking – don’t settle.: 情報摂取の変化のヒミツ。と、新世代ウェブプロモーション。


ここまでザックリと割り切れないが、やめてしまった項目は「RSSリーダーでニュースを読む」以外はほぼ同意。「各種ブログの定期巡回」はしていないが、気になったブログを過去記事に遡って集中的に読むというのは、いまでもたまにやる。積極的にはじめました項目は「twitterでぼやく」以外は同じ(現状、Twitterは閲覧オンリー)。いつまでも過度的で未完成な僕の情報収集法はこんな感じ。

*RSSリーダーは、ウェブはGoogle Reader、iPhoneはGazette。
*RSSリーダーで気になった記事には☆マークをつける。
*RSSリーダーで☆マークをつけた記事、その他気になったサイトやページを、
 Dericious(公開)
 Tumblr(公開)
 Google Bookmark(非公開)
 Scrapbook(非公開)
 ・・・この4種類に振り分けて整理。
*あとで読みたい記事は、Instapaper/Read It Laterに保存。

昨年9月のエントリー時点ではNetNewsWire>Google Readerだったが、いまは逆転。NetNewsWireはウェブとMacとiPhone、それぞれのアプリの未読数が一致しないという致命的な欠陥があり、Google Readerの方が関連するアプリの選択肢も多くカスタマイズしやすいということで、出戻り。色々と試してGoogle Reader+Gazetteの組み合わせに落ち着いたのは、同期は素早いし未読数が合わないというストレスがないから。Gazetteは未読数が数百を超えると不安定になってたまに落ちるが、機能的には必要にして十分(UIはiPhone版NetNewsWireの方が好み)。

Google Readerを使いやすくするために入れてるもの。

*Firefoxのアドオン

Feedly(Google Readerを雑誌的なUIで閲覧)
Better GReader(Google Reader内で元のページをプレビューしたり色々)
Read It Later(Google ReaderにRead It Laterへの保存ボタンを埋め込む) 

*Greasemonkey

Google Reader Subscriber Count
Tumblr on Google Reader
Google Reader Full Feed
Helvetireader
ReWriteGR

ブクマ依存症をそろそろ本気でどうにかしないとヤバいと思いつつ、ときどき「うぇっぷ」と吐きそうになりながら眼精疲労とドライアイでめまいを感じながら日々ブクマを続けるわたし(なにもそこまでしなくても・・)。
 

2009/03/26

Tilt Shift Meets Time Lapse On A Sunny Day

このブログで一番ページビューが多かった記事と言えば、ダントツでティルト・シフトについて書いたエントリー。箸にも棒にも引っ掛からない小難しいことをウダウダ書くよりも(その生産性のなさに自覚はあるつもり・・)、トピックの紹介や解説に徹した方が誰かのアンテナに引っ掛かりやすいのかもしれない。平明にわかりやすく伝えることにもっと注力した方がいいのかも(たとえ、脊髄反射的に反応したトピックであってもね)。

最近、少しづつ増えてるティルト・シフト・ムーヴィがタイム・ラプスの手法をミックスしていることにいまさらながら気づいた。ティルト・シフトとタイム・ラプスの相性がいいというか、不可分というか。逆に、微速度撮影じゃないティルト・シフト・ムーヴィという反証がいまのところ見当たらない(どこかにあるんだろうか)。


Miniature City from mockmoon on Vimeo.

Time Lapseのエントリーでも紹介したmockmoonさんの新作。群馬と東京のシティスケープとアンビエント・ハウス。


the east side of Los Angeles on a sunny day (tilt-shift & time-lapse) from clark vogeler on Vimeo.

エリック・サティとロサンジェルスの気怠い陽射し・・。ロバート・アルトマンの『ロング・グッドバイ』とマッシュアップしたいくらいのハマり具合。


Bathtub IV from Keith Loutit on Vimeo.

ティスト・シフト・ムーヴィを一躍広めた人といえば、やはりコンスタントに発表を続けるKeith Loutit。タイム・ラプス・ムーヴィは、アンビエントやミニマル・ミュージックと親和性が高いが、そうした方程式に頼らず、ティスト・シフト/タイム・ラプスのもたらす異化された日常、そこから逆照射されるオーディナリー・ライフのまばゆさを、あくまでポップな楽曲と合致させてるのがこの人の面白いところ。後半のヘリコプターの映像が白眉。



最後は番外編。アンビエントつながりということで、DJ Foodがゲリラ的に無料配信したKLFミックスを。本家はプレスリーをミックスしていたけど、こちらはビーチ・ボーイズをミックス(ヴォーカル・ヴァージョンじゃない方のラスト近くで流れる)。ユルすぎるサニーデイ・チルアウト。

DJ FoodがThe KLF「Chill Out」をリミックスしたMP3が無料配信中 : matsu & take
The KLF - The Sound of Mu(sic) (MP3) (FMusic)

3.27追記

Google Street View Time Lapse on Flickr - Photo Sharing!

グーグル・ストリート・ビューの画面をキャプチャーして編集したタイム・ラプス・ムーヴィがあったので追加。アイディアの勝利。これってグーグル・カーを運転するドライヴァーの視点を追体験しているということか・・。通常、YouTubeやVimeoのような動画共有サーヴィスにアップされる個人製作のムーヴィは、撮影者と編集者が同じである(もしくは、数人のユニットかチーム)という暗黙の前提があり、撮影者(オリジナルの著作者)と編集者が異なる場合はマッシュアップやリミックスと呼んで差し支えないと思うので、これも一種のマッシュアップと言えるが、この場合の著作権ってどうなるんだろ? この方法で無限にタイム・ラプス・ムーヴィが作れてしまうというワナ。(参考


mnemonic memo: Time Lapse
mnemonic memo: Tilt Shiftの箱庭世界
mnemonic memo: Motion Graph
 

ヴォークトとヴォイス

2回続いた「ヴ」表記問題のオマケ的エントリー(内容はぜんぜん関係ないです)。

ティム・オライリーの思考法を形作った本たち - YAMDAS現更新履歴

オライリーが影響を受けた本ということで、老子、コリン・ウィルソン、フランク・ハーバートという並びに西海岸系ギークの出自を感じつつ、ヴァン・ヴォークトの名前にハッとなる。中学生のときに読んだヴァン・ヴォークトの『非Aの世界』、とにかくハチャメチャな話で展開が読めなくてスリップストリームでスラップスティックなSFだった記憶がある。僕が「ヴ」をインプットしたのはこのあたりからかも。

オライリーの原文では、『非Aの世界』は一般意味論(General Semantics)を在野でポピュラーにした一冊と紹介されている(「a fun science-fiction book」と一言)。「非A」とは一般意味論の用語で「非アリストテレス」のこと。一般意味論はチョムスキーらに科学でもなんでもないと批判されているが、中坊の自分はそんなこととはツユ知らず、「非A(Null A)」という言葉の響きだけでご飯三杯くらいイケたのだった。

A・E・ヴァン・ヴォークトは、ウィキペディアによるとサイエントロジーに騙されたり、実人生は散々だったらしい・・。関係ないが、マクロビオティックの創始者として欧米では著名な桜沢如一がソッチ寄りの神秘主義者だったことを最近知った。マクー空間の恐怖 - 文化系ママさんダイアリーにそのトンデモぶりが余すところなく書かれている。マクロビで健康は保てない問題がニセ科学としてよく取り沙汰されるが、桜沢如一本人はマクロビをイイカゲンに実践した(=適度に守らなかった)がゆえに長生きしたとの説もある。思想的な功罪はともかくとして、何事も「過ぎたるは及ばざる・・」ということだと思う。


ヴォイスを割る (内田樹の研究室)
ひとりマス・メディア (内田樹の研究室)

「ヴォイスを割る」とはなにか? 内田先生は、町田康や小田嶋隆や佐々木倫子や幸田文を例にヴォイスについて語っているが、難解なようでとてもシンプルなことを言ってる気がする(内田先生得意の身体性と関連づけられている)。「私」の中にある複数の声に耳をそばだてろ、と。「多重人格ってデフォルトでしょ? 現実なんていつだって複数のレイヤーなんだもん。だから、現実を照応するわたしも割れてるの」という現代人の心の叫び、ていうか、Twitterの構造そのものがそうだよね。Me Myself and I。「菩薩のような一行のあとに、いきなり夜叉のような一行が出てくる」。いやはや、幸田文を読んでみたくなりました。しかし、「ヴォイスを割る」ってインパクトのあるコピーだなぁ。


mnemonic memo: ヴの表記について(その1)
mnemonic memo: ヴの表記について(その2)
mnemonic memo: あたしとアタシと彼女
 

2009/03/24

ヴの表記について(その2)

ひとつ前のエントリーの続き。

お手軽すぎて恐縮だが、Google Trendsと、その進化版、Google Insights for Searchで比較検証してみた。Google Insights for Searchの方がより詳細で、その言葉と関連づけられる検索ワードのランキングも出る。Google TrendsにあるNews Reference Volume(おそらくGoogle Newsのデータを元にしたグラフで、全体とニュースの双方を大まかに比較できる)が前者には見当たらなかった。両者のグラフを見比べるとときどき大きく食い違う部分があり、データの集計や抽出方法が異なるのではないかと思う。(以下、クリックするとGoogle Insights for Searchの検索結果が開きます)

バリエーション vs. ヴァリエーション
バケーション vs. ヴァケーション
バイオレンス vs. ヴァイオレンス
バイブレーション vs. ヴァイブレーション

このあたりは「ヴ」が弱く、(少なくともインターネット上の検索ワードに関しては)マイナーな表記であると判明。ヘヴィー、サーヴィス、ネイティヴ、ヴェクトル、ヴィークルも同様。ヴァイオレンスの関連ワードはドメスティック・ヴァイオレンスのみだった。

イベント vs. イヴェント
ライブ vs. ライヴ
ドライブ vs. ドライヴ
バラエティ vs. ヴァラエティ
バージョン vs. ヴァージョン

イヴェント、ライヴ、ドライヴ、ヴァラエティ、ヴァージョンは全体の山は低いが、News Referenceが目につく。マスコミではそれなりに使われてるということかと。ドライヴはIT関連というよりカジノドライヴという競馬関連のキーワードで底上げされてるっぽい。ライヴとイヴェントはやはり音楽関係のキーワード多し。

ビジョン vs. ヴィジョン
ビジュアル vs. ヴィジュアル
バリアス vs. ヴァリアス
ボイジャー vs. ヴォイジャー

ヴィジョンはビジョンの1割と健闘、ヴィジュアルになるとビジュアルの1/4にまで肉薄。キーワード上位に「ヴィジュアル系」「ヴィジュアルバンド」「ヴィジュアル系バンド」が並び、この界隈ではヴィジュアルというコンセンサスが取れているようだ。ヴォイジャーの関連キーワードはスタートレックで独占(笑)。

ボーカル vs. ヴォーカル
ボイス vs. ヴォイス
バイオリン vs. ヴァイオリン

ヴォーカル、ヴォイス、ヴァイオリンと、音楽関連用語は強く支持されている。ヴォイスは今年に入って異常な伸び。初音ミクやPerfumeの影響?と思ったら、どうやらドラマの影響みたい(僕はTVを見ない人なのでよく知らないが)。

バージン vs. ヴァージン
ビーナス vs. ヴィーナス
イブ vs. イヴ

今回調べた中では、ヴァージンとヴィーナスがそれぞれバージンとビーナスに数値で勝っている=それだけ広く認知されているという結果に。イヴもイブの8割で、毎年クリスマスシーズンのみ突出というわかりやすい規則性が(笑)。固有名詞ではイヴ・サン・ローラン、パラサイト・イヴ、イヴの時間が目立つ。ヴァージンは旧ヴァージンシネマズ六本木ヒルズを含むヴァージン・グループの検索ワードがほとんど。


無作為に思いついた言葉で試した結果は以上。下らないっちゃ下らないが、面白かった。これだけではなにも確信的なことは言えないし、グーグルが日本語のデータをどう解析してるのかよくわからないけれど、ある程度の目安や傾向は察知できるのではと思う。

僕自身、「ヴ」の表記の仕方はけっこう適当だし、「Viral」は「ヴァイラル」より「バイラル」の方がよく使われるから後者にしたり、なんとなく見た目の座りや収まりのよさ(+目にする頻度や刷り込み)で決めている部分も大きい。90年代的な感覚でいうところの「ヴァイナル」や「ヴァイブ」を、じゃあいま日常会話で使うかっていうとまず使わないワケで。世間的には「Vagabond」は「バガボンド」で敷衍してるから、「ヴァガボンド」だと「なにそれ?」みたいな。そういうユレやズレも含めて、言葉と付き合っていけたら面白いと思う。


mnemonic memo: ヴの表記について(その1)
mnemonic memo: 「ー(音引き)」のナゾ
 

ヴの表記について(その1)

プロの校正の方が見れば、このブログのテキストもグダグダなのは自覚しているつもりだが、文章を書くときは、最近はなるべく「ひらく」ように留意している(校正の用語で、「ひらく」=ひらがなにする、 「とじる」=漢字にすること)。

「等」は「など」、「事」は「こと」、「物」は「もの」、「時」は「とき」、「今」は「いま」、「所」は「ところ」、「全く」は「まったく」、「全て」は「すべて」、「皆」は「みんな」、「後」は「あと」、「幾つ」は「いくつ」、「一つ」は「ひとつ」、「一人」は「ひとり」、「何か」は「なにか」(*)、「何故」は「なぜ」、「比べて」は「くらべて」、「確かに」は「たしかに」、「既に」は「すでに」、「分かる」は「わかる」(*)、「出来る」は「できる」(*)

よく使う「ひらく」言葉を列挙すると、こんな感じ。*印はたまにどちらか迷うもの。最初から「ひらく」と決めていたわけではなく、だんだん「ひらく」ようになってきた。その方が読みやすく、視覚的にも軽く見えるから(自分の文章のカタさを多少なりとも和らげたいという悪あがきでもある)。このブログも、たぶん過去のエントリーに遡るほど「とじて」ってるハズ。「ひらく」方が単純に気持ちよくなってきた、というのが正解かも。どっちが正解というのはないと思う。

英語がアルファベット26文字ですべてのワードを表現(!)するのにくらべ、日本語は同音表記で平仮名、片仮名、漢字の3種類(+外来語)が入り交じるケオティックな情報空間に、数字は漢字か?アラビア数字か?さらに半角か?全角か?という選択肢が加わり、わずかな文章を書くだけでも実はかなりのストレスとカロリーを消費している気がする(笑)。数字はたいてい半角数字にしてしまうが、その方が変換の手間がかかるのがまたストレスフルだ(9や15のような全角数字がいまだに許せない人なので)。

あと、二重括弧=『』はアルバムのタイトル、一重括弧=「」は曲のタイトル、映画や本のタイトルは『』にすることが多いがこれも人によってマチマチだろう。場合により、「コト」や「ワケ」や「カタチ」など、あえて片仮名表記でポップにするという、わざわざ説明すると野暮だよなーということもよくやる。迷うということはルールが自分の中でキッチリ定まってないということでもあるが、たぶん、誰もがナットクする正解はないと思う、だからややこしい。

上記に加え、自分だけかもしれないが妙に気にするのが、「V」を含む英語の片仮名表記を「ヴ」にするかどうか。もともと外来語なんて、ネイティヴな人からすればほとんど正確さを欠いた現地に最適化された摩訶不思議なホニャララ語だろうから、こだわるなんてそもそもムダなのか。そういえば、ピーター バラカンが『猿はマンキお金はマニ―日本人のための英語発音ルール』という近著でそのへんの矛盾をつついている。こちらの特設サイトで、バラカン氏本人による発音チェックが聞ける(イギリス英語なのでアメリカ英語とは違う、念のため)。

この重箱の隅をつつくような「ヴ」問題がずっと気になっていて、「ヴ」を使うのは結局、英語に憧れてるだけのカッコつけに過ぎないんじゃ?というミもフタもない感想も出てくる。長くなったので、次のエントリーにて。


mnemonic memo: 「ー(音引き)」のナゾ
  

イヴが生まれるとき

万来堂日記2ndさんがこちらで取り上げていたアニメ『イヴの時間』を観た。まだ途中なのでなんとも言えないが、ディックかどうかはともかく(劇中で何度も引用されるのはアシモフのロボット三原則)、たぶん十数年後にアンドロイドが普及する時代が到来した時、間違いなく起きるであろうアンドロイドに人格や人間性はあるのかイシュー、またアンドロイドと人間がどのような関係を築いていけるのかイシューを重くなりすぎずにコミカルな青春モノとして描いている。そうなった時のケーススタディを無理のない近未来という現実に即した形で探ってる感じ(まぁ、僕の苦手な萌え要素も当然入ってくるんだけど。ほんの匂わせる程度だが、セクサロイドの存在にも言及)。

苦手ついでに書くと、産総研:プレス・リリース 人間に近い外観と動作性能を備えたロボットの開発に成功というニュース、あくまで個人的な感想に過ぎないが、極めて日本的オタク文脈におけるヒューマノイドの受容で(ありていに言えば有名造形師にキャラクターデザインを頼んだ、みたいな)、この造形感覚が近未来にありふれてる図を想像すると・・。ジャパンメイドの人型ロボットって昔からアトムやマクロスなどアニメやマンガへのオマージュをナイーブにヰタ・セクスアリス的に捧げたような造形が多いから(これは偏見かもしれないが、宮沢賢治あたりまで遡る母性愛と幼形成熟=ネオテニーとサブカルチャーの日本独特なミックスにもつながっている)、この展開は国民性というか頷けるものがあるけど。

『イヴの時間』は『電脳コイル』ほど設定に凝りすぎる印象もなく、カメラワークと心理描写の丁々発止が非常に巧みだと思った。吉浦康裕監督は過去作品の『水のコトバ』がなかなか斬新で、押井守『天使のたまご』の影響下にありながら、押井ほど難解・晦渋にならずに(世代の違いも大きいと思う)、ダイアローグと映像が小気味よく突っ走っていく作品だった。

white-screen.jp:Yahoo!動画で人気を呼んだ、吉浦康裕監督作品オールナイト上映「イヴの時間 act03」3月28日だそうです。
 

2009/03/23

グーグル+アマゾン共和制?

少し前に話題になったKindleしかり(*)、インターネット上に架空のアレキサンドリア=世界図書館を作っちゃおうぜ!計画にも受け取れるグーグルのブック検索しかり、出版界を揺るがすグーグルとアマゾンの動きを見ていると、アマゾンは「モノ」=物流&ハードウェアの販売、グーグルは「コト」=情報やデータベースの構築とそれぞれ立脚点や着地点は違えど、人々が行き交う最も情報量/交通量の大きいトラフィックやパイプラインを占有し(占有という言い方がよくないのはわかっているが、傍目からは最早そうとしか見えない)、そこに流れこむ「モノゴト」=平たく言えば、コンテンツ一般を一網打尽にしようという戦略においてほぼ同じじゃないかと、ふと思ったり。

不思議なことに、両者がやろうとしていることは、それほど独創的で革新的でカッティングエッジというワケではなく、むしろ、子供にもわかるような平易で直球勝負なアイディアを、あきれるほどの物量作戦とテクノロジーで無邪気に一点突破しようとしているところに特長がある(実体としての無数のサーバや物流倉庫がその子供じみたミッションを後ろで支えている・・)。グーグルとアマゾン(もしくはアップルその他のグローバル企業)の提言は人類の恒久の普遍の意思(ってナンナンダ?)によって決定されているかのようだ。

それら正論に反対する術を、いまのところ僕らは持ち合わせていない。エコロジーという正論を(正しく)論破するのがむずかしいように。「かつての富裕支配層が世界中の文物を収集し、出版や言論という叡智をコントロールし牛耳っていたのと一体全体どう違うんだい? 国家という枠組みが相対的に弱くなり、企業がそのポジションに置き替わっただけじゃないの?」という素朴な疑問は、「でも、こうすれば、あなたもわたしもみんなハッピーになれるでしょ?」という声の後ろでしぼんでしまう。誰もが等しく分かち合える、シェアできる公共の利益という免罪符的スローガンは強い、というか無敵だ。そんなお題目はいつだって理想でしかなく、現実と果てしなくズレていくのだが。

世界がこうして平準化し再編されていくという大きな流れに抗うことは誰にもできない。グーグル/アマゾンがやろうとしている一種のユニバーサルな公共事業(?)というかエコ・システムについて書いているうちに、なにを書きたいのかよくわからなくなってしまったのでここまで。お粗末。

*=個人的には電子ブックリーダーは印刷物としての本の代用となるにはまだまだ未完成のガジェットだと思う。iPhoneで「豊平文庫」という青空文庫リーダーを試したり、「クーリエ・ジャポン」を読んだりしているが(「クーリエ・ジャポン」には、ボイジャーの「T-Time」というビューア・ソフトが使われている。90年代半ばのマルチメディア全盛時代を知る人なら、ボイジャーという会社が時代をまたいで生き残っていることに感慨を覚えるだろう)、フリックやタップでページをめくるという行為と、印刷物のページをめくるという行為は、脳に与える効果が違う気がなんとなくしている(単に慣れの問題かも)。

ハーモニー

SF作家の伊藤計劃さんが亡くなられたそうだ。闘病生活を送っているというのは知っていたが、近いうちに読もう、と思っていたひとりだった。伊藤さんがブログで書かれていた映画批評には感じるところが多かった(共感、とはまた違う)。特に、昨年8月の「誰も信じるな - 伊藤計劃:第弐位相」というエントリーには自堕落な自分の頭をガツンと殴られたような気がした。「要注意ワードは「深い/浅い」です。あと「薄い」。これは、責任とか自分とか言ったものからものすごく遠い単語です」という言葉は、一見、よくある「感想文や印象批評はダメ」論に見えるけれど、「わかったような気になってるな!」というケンカ腰の崖っぷちに立った本気の構えから出てきたもので、このエントリーの下にある「余談」の文章はさらに鬼気迫るものがある。彼の強い語気にあてられて、「これとこのワードを使わないようにすればいいんだ」と教条主義的に読んでしまってはダメで、(たとえブログであっても)このくらいの覚悟を持って言葉を紡ぐ必要があるということだ。合掌。

「映画とか、絵画とか。でも、持久力という点では本がいちばん頑丈よ」
「持久力、って何の」
「孤独の持久力」
(『ハーモニー』/伊藤計劃)
 

2009/03/15

Made Me Chuckle



iPhoneの音楽アプリといえば、ギターやピアノなど楽器のシミュレーション系、宅録(って死語?)/DTM系、MidomiやShazamといった楽曲の解析系、あとはネットラジオ、大体このへんのカテゴリーに収まるのかな。表現としてはどうしても草食系男子なアプローチが多くなっちゃう。そんな中、ガールズパンクなiPhone四重奏はフレッシュ。



クボタタケシも観たというニューヨークのライヴ(1981年)。初めて観たけどエモですな。コンサート途中で音が止まったらしいし。この青春一直線なひたむきさ、生真面目さがいまとなっては微笑ましい(良い意味で)。



現代音楽ちっくなピアノを奏でる猫。



トッド・テリーでコスる猫。


Bicycle Built for Two Thousand from Aaron on Vimeo.

2000人のヒューマン・ヴォイスで歌う「Bicycle Built for Two」。上はメイキング・ヴィデオ。オリジナルは同サイトの「Listen To Computer」をクリックすると聴ける。「Bicycle Built for Two」の歌詞を一面に掲載した『2001年宇宙の旅』のポスターはこちら。Amazonによる求人情報サーヴィス、Mechanical Turkを使って人というか声を集めたらしい(関係ないが、このネーミングはグッジョブ)。ネット上でリミックスとか音源のやりとりとかライヴ・セッションとかはよくあるが、こういうアイディアはいいかも。作者のひとり、Aaron Koblinは、カメラで撮影されてないPVで昨年話題になったRadioheadの「House Of Cards」を手がけている。なるほど、つながりました。

Misc

やっぱり息切れしますね、ブログ・・。テキスト系のフリをしながら、映像関連を3本エントリーしたりと、どうにも的の定まらないブログですいません(しかしネタが続きませんでした)。今回もまとまらないままエントリーします(ってのがブログらしいのか)。


世の中を大雑把に10年単位で語るというイシュー。

ついつい80年代、90年代、ゼロ年代・・・とか安直に書いてしまいがち(自分もほんとそう)。前から薄々思っているが、10年単位でカッチリ物事が変わるわけではない(当たり前)。10進法の思考法が慣習というかテンプレートになってるだけ。「1995年以降」とか「2001年以降」うんぬんというのも同様か。エビデンスがちゃんと掘り起こされていれば問題ないかというと? 歴史を大きく変えた事件や事象、時代のピークタイム、いわゆる特異点な物事を結びつける時の所作、手つきについて(連続している時間を一定間隔で切って語るというのではない、歴史や時代の語り方について)、もっと勉強してみようと思った。


古い建造物をどう保存・再生するかイシュー。

例の下北沢問題にも通じるが、20世紀の名建築と言われる建造物が老朽化や諸々の事情によって壊されることに対するもやもやとした思い。基本的には時代の流れに合わないものは切り捨てていくしかないというドラスティックな意見に賛成するし、センチメンタルな懐古主義だけでは(それが動機づけにはなったとしても)現実的には難しいとは思う。しかし、そこを「設計主義」だけで押し切るのもなんだか違和感が残る(今頃、『東京から考える―格差・郊外・ナショナリズム』を読んだので、このへんは改めて・・)。

どうやら、グランドデザインというか都市の景観についてヴィジョンを語ることが、いまの時代は難しいみたい。とはいえ、海外のデザイン系ブログでよく見かけるイマドキのコンピュータライズドされた「自由」な建築には、イマイチ心を動かされない。リジッド=固いモダニズムから遠く離れてより自由奔放な造形を獲得していってるのはよ〜くわかるが、グローバリズムのベルトコンベア式大量生産工場というか、そこになにがしかの「必然性」を感じないというか。「必然性」というのも曖昧な言い方だし、それが「作家性」とニアイコールだとすると、20世紀の亡霊に取り憑かれた観念に過ぎないのかもしれないなぁとも思う。


足を運んだイベント。

2月の話になるが、以前からブログを拝読させてもらってるプロダクト・デザイナーの秋田道夫さんの『空気のてざわり』展のトークイベントに行く。インタビュアーはライターのFORM_Story of designさん(こちらのブログも購読してます)。秋田さんは予想していた通りのヤンチャで親しみやすいオジサンというキャラクターで、やっとリアルに像を結べた感じ(残念ながら、お話はできませんでした)。

評判のよかった『ライト・[イン]サイト—拡張する光、変容する知覚』展の最終日に駆け込む。パイクとボイスで最初と最後を締めるのは教養主義的でどうかなぁと思ったりしたけど(エラそうですいません)、アンソニー・マッコールがとにかく素晴らしくて、あれだけで500円の価値はあった。あとは、初めて触ったテノリオンが面白かった。かなり前にラフォーレの展覧会に行った以来の岩井俊雄さんとの遭遇。僕はもっと単純なシーケンサー的なものを予想していたのだが、グラフィカルなインターフェイスと音との連関は想像以上に繊細でプレイフルだった。会場で流れていたヴィデオのひとつが一番楽器として使いこなしてる演奏だと思った(おそらく岩井さんご本人?)。


iPhone四方山話。

何はともあれ、TumblrやTwitterなど、ログを見る/ポストするウェブサーヴィスがiPhoneに最適化されているのを実感。ロギングするためにアジャストされたジャストなデバイスという位置づけ。なんつて。TwitterはiPhoneがなければやってなかったと思う(なぜか母艦のMacではやる気がしない。いまだクライアントでコレというのを見つけられないというのもあるが)。Palm Preがリリースされたらアーリーアダプターな人はそっちに流れそうだし、iPhone OS 3.0はどの程度、巻き返せるだろうか。コピペ実装で大喜び、な図だとしたらちょっと・・。


アメコミと映画。

映画はまったく観れてない。『ベンジャミン・バトン』と『チェンジリング』は公開中に行けるかな。『ヘルボーイ2』も見逃して唖然。一作目は先日DVDで鑑賞、『パンズ・ラビリンス』を期待するとズッコけるが、キャラクター映画だと割り切れば楽しめる出来映え。ギレルモ・デル・トロ監督のフリークスへの愛は本物だなと思った。次作はピーター・ジャクソンとの共同脚本で『ホビットの冒険』。嗜好もルックスもソックリなオタク二大巨頭によるハリウッドマネーをつぎこんだ怪獣戦争って感じになるんでしょうか(勝手な予想)。ギレルモが映画化を切望しているというラヴクラフト作品、是非、低予算でも実現してほしい。『ヘルボーイ』つながりで言うと、『ウォッチメン』原作はいまとてつもなく読みたいアメコミ。

2009/03/05

Motion Graph

映像関係のエントリーが連続してしまうが(昨日アップしたTime Lapseは昨年秋に書きかけて放置していた)、タイポグラフィ、ピクトグラム、シンボル、グラフを主題にしたモーション・グラフィックが溜まってきたのでポスト。いくつかの作品に特徴的なモーションブラー="ブレ"の効果は、After Effectsによるもの。アニメーションによる世界認識、世界図解が、ネクストレベルに入ったことを改めて実感・・・なんてカタい物言いはともかく、動くグラフィズムはとにかく楽しくてワクワクするということに尽きる。

モーション・タイポグラフィについては、white-screen.jp:モーション・タイポグラフィの歴史を振り返るで、アレックス・ゴファーの「The Child」やファンクストラングの「Grammy Winners」(どちらも懐かしい!)などの古典が紹介されている。


The Big Lebowski Typography from Koos Dekker on Vimeo.

映画『ビッグ・リボウスキ』の台詞をモーション・タイポグラフィ化。ムードと色味と質感の統一が美しい。ドラマの1シーンをフィーチャーした同様の手法による動画がいくつかVimeoにアップされていて、どれも完成度が高い。作者はロッテルダム在住の学生。



映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ(Lock Stock and Two Smoking Barrels)』の台詞から派生したモーション・タイポグラフィ。


Flickermood 2.0 from Sebastian Lange on Vimeo.

今回紹介した中で一番最近話題になったもの。19世紀のイギリスの詩人、パーシー・ビッシュ・シェリーの詩がテキストとして使われている。音楽は初期スクエアプッシャーを彷彿とさせるが、10年前のパソコン環境では、(音楽に比べて)ここまで精緻な動きやニュアンスを映像でコントロールできなかったよなぁと思うと感慨深い。


Know Your Human Rights!

世界人権宣言の60周年記念キャンペーン用に作られたモーション・タイポグラフィ。オリジナルのテキストはエレノア・ルーズベルトによるもの(ルーズベルト大統領夫人がアクティビストだったのをいまさらながら知った)。作者のSeth Brauはニューヨーク在住のグラフィック/アニメーション・アーティストで、自身のポートフォリオ的な映像はこちらCool Huntingの紹介記事に彼のコメントもあり。




「Why We Drink?」という問いから、意識の流れをフローチャート/グラフ化したモーション・グラフィック。ドイツ語なまりの英語のナレーションが心地よく耳に残る。いつもチェックしているswissmissで目に留まり、Tumblrにポストしたのが昨年9月。モーション・グラフ(あえてグラフィックではなくグラフと呼んでみたい)をなんとなく意識しだしたのはこの辺から。


The Crisis of Credit Visualized from Jonathan Jarvis on Vimeo.

昨年の金融恐慌を解説したモーション・グラフィック。サブプライム・ローンやレバレッジの仕組みもわかりやすく視覚化されている。作者のJonathan Jarvisはメディア・デザイナーで、Oraclesというタッチ・インターフェイスの開発者でもある。



インターネットの歴史をモーション・グラフィック化。この並びだと一番シンプルでオーソドックスな出来だが、そこが個人的にグッときたりもする。インターネットの歴史を8分のアニメーションで見る(動画) : Gizmodo Japan(ギズモード・ジャパン)に、ナレーションの翻訳が掲載されている。



ラストはロイクソップ(Royksopp)の「Remind Me」。いま見ても非常によく出来たモーション・グラフィック。一昔前のリアル過ぎないアイコンのデザインもイイ。

Time Lapse

今年1月、このブログの訪問者数が瞬間的に急増したことがあった。その時期、ティルト・シフト(Tilt Shift)のキーワードで訪れる人が多かったので、誰かがリンクでも張ってくれたのだろうか? 

そのティルト・シフト(Tilt Shift)の続編的なエントリーで、今回はタイム・ラプス(Time Lapse)。タイム・ラプスは、低速度撮影、微速度撮影、インターバル撮影などと呼ばれる。低速度で撮影してノーマルの速度で再生すると早送りになる。Wikipediaによれば、『月世界旅行』で知られる映画監督ジョルジュ・メリエス(Georges Méliès)が1897年に使ったのが最初らしいから、かなり古い。『ゾディアック』のエントリーでも触れたが、いまではいろんな所で目にするスタンダードな手法である。



Amazon.co.jp: コヤニスカッツィ: ゴッドフリー・レジオ

タイム・ラプスをメジャー映画で大々的にフィーチャーしたのが『コヤニスカッツィ』(1983年)。フィリップ・グラスのミニマル・ミュージックとタイム・ラプスのマッチングが最高に気持ちいい。露骨なまでに文明批判的なメッセージを打ち出した極めて真面目な意図で作られた壮大なミュージック・ヴィデオというかヴィデオ・ドラッグというか。初めて知ったがコッポラが製作に関わってたのか。上のトレイラーの中程に出てくるニューヨークの街、80年代の風俗がタイムカプセルを眺めてるようで新鮮。こちらでも触れたNakedWildChildというイベントでカッツィ三部作を映像で流したことも。



Timelapse Large

これはロサンゼルスの夜景のタイム・ラプス。ここここにも映像あり。上のキャプチャー画像、飛行場を映した光の玉が滑空するショットが、ロサンゼルスつながりで『ブレードランナー』を思い出させる。そんな近未来のイメージの一方で(「ブレードランナー」は2019年という設定だからたったあと10年後)、ジェームズ・エルロイじゃないがロサンゼルス=ハリウッド=虚飾と暴力と欲望の街というイメージは強い。そういう吸引力がある都市のイメージをこちらが勝手に補完して見てるから、魅力的に映るのかも。



Nature Time Lapse 2 from mockmoon on Vimeo.
continuous shatter: 微速度撮影動画まとめ第二弾

一眼レフとAfter Effectsで個人でここまで出来てしまうという好例。同じ作者がHASYMOの曲を使った動画はこちら



YouTube - Discovery Channel Planet Earth Time Lapse ft. The Album Leaf

ディスカバリー・チャンネルのドキュメンタリー番組『Planet Earth』のタイム・ラプス+アルバム・リーフ(Album Leaf)の「The Outer Banks」。



Science Machine(ショート・ヴァージョン) from Chad Pugh on Vimeo.
Science Machine on Vimeo(ロング・ヴァージョン)

Illustratorを使ったイラストが完成するまでのタイム・ラプス+ポーティスヘッド(Portishead)。作品の制作プロセスを追った微速度撮影は探せばいっぱいありそう。



- TOT OU TARD -
white-screen.jp:ミシェル・ゴンドリー最新MV「Soleil du Soir」のタイム・ラプスがスゴい

ミシェル・ゴンドリーによるクリップ。風景ではなく、ひとりの男の平凡な一日をタイム・ラプスで再現するというアイディアがユニーク。一度撮影した素材をただ時系列に沿ってそのまま並べるのではなく、同じ構図を朝昼晩のそれぞれの時間帯で撮った素材をシャッフルして、男の動きがつながるように編集している。

Songsmith

30ドルの自動伴奏ソフト、Songsmithがマイクロソフトのネガキャンかと言われるほどのひどい出来映えで話題を呼んでいる。YouTubeにはSongsmithによる有名曲のリミックスやマッシュアップが大量にアップされていて、ヴォーカルと伴奏のHorribleなギャップに笑うべきかどうか、こちらのキャパを試される。

それらを聴いて思ったのは、マイクロソフトはスーパーやコンビニといった業種にマーケットを絞ってこの製品を販売すべきじゃないかということ。これは、究極のスーパーマーケット・ミュージック=ミューザックの自動生成マシンなのだ。人件費やスタジオ代をかけずに、原曲を読み込ませればお手軽にチープで気の抜けたアレンジを吐き出してくれる。現状の完成度だと逆に人の耳をそばだたせてしまうので、退屈なスーパーのBGMとしては失格かもしれないが・・。



2007年にYouTubeを使ったバイラル・ヴィデオとして成功した「Chocolate Rain」。原曲からブルースのコード進行とのマッチングの良さは予想できるので、あまり意外性はないかも。オリジナル



この「Beat It」はファンク・ヴァージョンとしてかなりイイ線いってると思う。サビにおけるマイケルのヴォーカルとベースとエレピの絡みは予定調和的な和声の解決を断固拒否していてクール(このじらされ方がファンクだと言えなくもない)。オリジナル


 
同系統ではドゥービー・ブラザーズの「Long Train Runnin'」も違和感がない。やはりサビのコーラスで盛り上げるべきところで気の利いたコードチェンジがいつまでたっても訪れず、イヤな汗を背中にかきそうになる。それにしても、この曲ってこんなにブルーアイドソウルだったのか。オリジナル



マーヴィン・ゲイの「What's Going On」の流麗でマーベラスなコード進行をまったく解析できないSongsmithの完敗。和声の完膚無き破壊、黒人音楽への冒涜・・真面目な音楽ファンは発狂しそうになるかも。同様の作例としては、Take On Meがある。オリジナル



Songsmithはあまり複雑な和声進行の曲には向かないようだ。TLCの「No Scrubs」はまんまスティーリー・ダンなキーボード・リフがスムーズにヴォーカルに寄り添い、一本調子ながらうまくハマっている。オリジナル

かといって、単調であればいいわけでもない。同じR&Bでも、ビヨンセの「Single Ladies」は豪快に空振りしている。オリジナル 最近のR&Bやダンスホールに見られる、ほとんど調性感のないスカスカなダンス・トラックはSongsmithにとって未知の領域だ。



ビーチ・ボーイズのとろけそうなメロウ・ヴァイブの白昼夢が、牧歌的かつ神経症的な80'sテクノポップに。この解釈は斬新。ここでもサビのコーラスがしっかりシカトされてるのはご愛嬌。オリジナル



テクノに化けた系列の傑作はやはりこれかな(繰り返し聴ける、という意味で)。テンポを倍でカウントしている。単調なバックトラックが、ビートルズから連綿と続くイギリスお家芸のソングライティングの上手さを際立たせつつ、ドラマティックな強度をキープ。オリジナル



ホンキートンク・ピアノのアレンジで磨きをかけられたエミネムは、ウィットに富んだチンピラのチカーノやズートスーツに身を包んだキャブ・キャロウェイの再来のよう。ペーソスとは物悲しいおかしみであることを余すことなく伝える曲。オリジナル


優れたメロディはそれだけ取り出しても(トラックを差し替えても)、ちゃんと成立してしまうという当たり前のことをSongsmithは逆説的に教えてくれるのかもしれない・・。