2008/10/10

iPhoneと音楽の可能性

iPhoneについて長々とエントリーを書いてみたが、どうもイマイチ面白くない。まぁ理由は自分がiPhoneを持ってないので著しく当事者性に欠けるからだろう(笑)。気分を変えて、iPhone関連の音楽アプリについて。

iPhone用の音楽アプリはデベロッパーやソフトウェアカンパニーから続々とリリースされている。MPCライクなBeatMaker、Roland TR-909にインスパイアされたドラムマシンIR-90、iPhone版テノリオンのPaklSound1は、どれもシーケンサーとタッチパネル・インターフェイスの相性の良さを示すようなアプリだ。



BeatMakerは自分もちょっとだけ触らせてもらったが、美麗な画面とハイクオリティのサンプリング音が揃っていて、「2千円台の音の出るオモチャ」ぐらいに思っていたこちらの予想を超えたレベルにワクワクさせられた。何よりビックリしたのは、サウンドライブラリーにリチャード・ディヴァイン(Richard Divine)とマン・パリッシュ(Man Parish)の名前があったこと! MIDI Exportもサポートしてるし、ガチで本気で次世代のミュージック・インストゥルメントを目指していることがわかる。

これらのアプリは、すでにある楽器をシミュレートしたりエミュレートしたりといったアプローチの商品で、これまでに存在しなかった全く新しい概念の音楽アプリではない。パーソナル・コンピュータのパーソナルという言葉に一度夢を見てしまった人間としては、ウォークマンやiPodが個人のライフスタイルを一変させたような、ある種の発明に近いようなアイディアを具現化する環境としてもiPhoneに期待したいところ。

ということで、デベロッパーではなく個人のクリエイターが発表したiPhone用の音楽アプリを紹介。ひとつはブライアン・イーノがPeter Chilversと共同制作した自動音楽生成ソフトBloom



CloseBox and OpenPod ; ブライアン・イーノとわたしがiPhoneで奏でるアンビエント : ITmedia オルタナティブ・ブログ

デモの動画を見ると、ただ曲を流すのではなく、ユーザーによるプログラミングの融通が利く作りみたい。聴くことに集中させないような、飽きるか飽きないかの微妙なセッティングの匙加減がアンビエントのキモだったりするので、その辺もうまく出来ている。Peter Chilversのサイトにある現代音楽寄りのアンビエント作品の内、Flashで作られたdropletsは、そのままiPhoneに移植されてもおかしくない内容だ。

もうひとつは、徳井直生さんのAudible Realitiesによる3番目のiPhoneアプリ。



かつて音楽と呼ばれたもの » Blog Archive » 10 seconds ago - 今、ここを感じる音楽

これまでの2つのアプリはお遊び的な要素が大きかったが、「10 seconds ago」は10秒前の音を流すという単純な時間操作で「視覚的なコンテクストから聞こえてくる音を切り離す」、「いま、ここ」にある存在への気づきを与えるコンセプトが素晴らしいと思う。

これってアンドゥ(undo)がパソコンによって初めて可能になったことや、Wayback Machine、MacOS X Leopardで採用されたバックアップツール、Time Mashineなど、不可逆でリニアな現実時間をテクノロジーが歪ませたり逆戻りさせることにもつながる。

癒し系なコンセプトが仲間から「ぬるい」と評されたようだけれど、プロダクトとして入念にパッケージングされたアプリの傍らで、「Bloom」や「10 seconds ago」のような、シンプルなアイディアをシンプルにアウトプットした自由な発想のアプリがApp Storeに溢れてほしいと妄想している(願わくば、悪評高いアップルのアプリ登録&審査の敷居が低くなればいいなと)。

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