リスナーの好きな値付けでダウンロードできるレディオヘッドの新作「In Rainbows」が話題になっています。EMIとのディールが切れたということで、そういえば、90年代にもレコード会社から干されてしまったパブリック・エネミーがネットでアルバムを販売していた記憶があります。不況にあえぐ音楽業界、いいニュースは聞きませんし、先日お会いした某レコード会社のディレクターさんは「何が売れるのかサッパリわからない」と言ってました。洋楽ロックは売れず、お洒落なジャジーヒップホップは相変わらず売れているとか。一方で、アメリカではヒップホップは以前より売れなくなってきており、ゴールドやプラチナアルバムは出にくい状況だと言われています。90年代以降、チャートは白人文化から黒人文化に完全に様変わりしましたが、それもまた飽きられてきているのでしょうか。
2000年以降って、ダブディスコ、フリーフォーク、グライム、ダブステップ、バイレファンキ、バルチモアブレイクス、ニューレイブなどなど、様々なジャンルが「新しい」という宣伝文句と共に取り沙汰されているワケですが、残念ながら、個々の音に惹かれることはあっても、僕はどこにもコミットできませんでした。半年ほど前に、やはり某レーベルの方に今は「シューゲイザーが売れるんですよ」と言われた時に「へぇ」と思ったぐらいで、その後、「これだったらマイブラを聴けばいいんじゃないか」と反動的に思ったりもしました。ダブステップもピンと来ません。ジャングルが出てきた時の興奮とインパクトをどうしても超えないのです。年を取ったということもあると思います。それ以上に、00年代は音楽を取り巻く環境が大きく変わってしまい、ムーブメント自体が小粒で、似非ジャーナリスト風に言えば、そこに積極的な「意味」や「物語」を見い出すことが出来にくくなってしまいました。それでも、いつの時代も新しい音楽は生まれてくるワケで、僕は純粋なリスナーに戻った気分でそれらを聴いたり、ラジオやカフェやクラブで音を流すことの方が面白くなってしまいました。
CDが売れないという状況はiTunes Music StoreやP2Pの影響だとかなんとか言われますが、それも間違いではないと思うのですが、どんな中身のCDでも一律の価格でパッケージングされて売られるという商売のあり方に限界が来ていることの方が大きいと僕は思います。iTMSだってアルバムを曲単位にしただけで、この限界の中で商売しています。洋服も家も食べ物も、世の中のほとんどのものは流動的な値段で(多くは売る側の一方的な値付けで)売られています。CDだってヤフオクでレア度や人気度によって千円になったりウン万円になったりします。これは自由市場だから当然で、本やCDの再販制度が異常なのだと言うことも出来ます(その辺りの面倒な話についてはここでは割愛します)。ということは、システムさえ構築できれば、アーティストとリスナーが1対1で売買する、それこそフリマや原始時代の物々交換に戻るのも一つの選択肢かもしれません。「It's Up To You.(あなた次第)」とささやくレディオヘッドの勇気ある行為にはエールを送りたいと思います。
2007/10/14
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿