2010/07/18

愚直に率直に実直にやるということ

この2日ばかりで、「進撃の巨人」という漫画の1・2巻を読みました。普段は漫画喫茶に駆け込むのですが、珍しくこれはちゃんと腰を据えて読みたいと購入し、そして、その予感が間違ってなかった、という幸福な出会いを果たしました。真っすぐに何かに対峙してそれを婉曲的でなく描く(もちろん、そこには時代の要請や作家本人の企みによるネジレや迂回はあるわけですが)、こういうストレートフォワードなアプローチというか表現が、このところつとに気になるしアガります。下に貼った楽曲も、そのストレートさに惹かれてヘビロテしているもの。「進撃の巨人」については、今度ちゃんとレビューします。以下、文章が音楽に浸りつつ書いたのでウワついてますが、そのままアップします。


Flying Lotus - MmmHmm



サンダーキャットのベースの雄弁なフレーズが、この曲を単なるループするトラックから救い出し、ジ・オーブとマーティン・デニーをミックスしたようなPVが、笑っちゃうほど愚直に内的探求の旅へと誘う。マジにドープでスモーカーズ・ディライトだぜとウソぶいても、気づいたら何回もリピートしているプレーンソング。

「It's plain to see for you and me, love. It cannot hide. Just be who you are.」
( あなたとわたしのために率直に愛を理解するということ。隠す必要はない。ただあるがままでいればいい。)


環ROY - Break Boy in the Dream feat.七尾旅人



コム・デ・ギャルソンやプラダの店の前で佇むなんて、それなんて都会のありふれたイメージ?という意地悪な見方は、この気恥ずかしいまでにナイーブで前向きなステートメントの前で消え失せる。「すごくすごいものつくりたくて」。Bボーイズムなんて肩をいからせてないで、身軽になろうよ、と。ロロロによるニカなメロウネスは決して耳新しくはないけど、これでイーノだ、と思う。「Rollin' Rollin'」に続く、バックトゥナインティーズな側面もある、フラットな日常生活から生まれた等身大のラップと歌。

Autechre - Lowride



最後は古い曲でごめんなさい。いまのオウテカしか知らない人がこれをブラインドで聴いてオウテカとわかるかどうか。「Summer Madness」を丸々サンプリングした、いかにも90年代半ばだよなぁというザックリとしたトラック・メイキング。刻んでナンボの昨今のEDIT界隈から見ると、「素材そのままを味わってください」と言うシンプル・レシピが「こねくりまわすのもいいけど、これでいいんじゃね?」的に耳元でエクスキューズしたり、しなかったり。


Feed@Sign外苑前

2010.07.18 19:00 - 23:00
Sound: Kid Neri, CONV2U, EDM, Eucalypso
Charge: Free

*カフェの通常営業時間内に音楽をかけていますので飲食代はかかります。

2010/07/04

Pinkman Soft Cream Exhibition Opening Party

Pinkman Soft Cream Exhibition Opening Party 2010.7.03 (SAT) 20:00-21:00 @ 麹町画廊

Holger Czukay - Persian Love
Van Dyke Parks - Steelband Music
John Gibbs And The Unlimited Sound Of Steel Orchestra - Steel Funk (Inst)
Brian Eno & David Byrne - Jezebel Spirit
The Books - A Cold Freezin' Night
General Strike - Interplanetary Music
Cabaret Voltaire - Nag Nag Nag (Akufen's Karaoke Slam Mix)
□□□ - Summertime
Tes - Space Travel (Tofubeats Ghetto Mix)
Hidenobu Ito - Deep The Flag (Funk Method 4 T.Kadomatsu)
Y.M.O. - Tighten Up (The Robert Gordon Remix)
Luke Vibert - Brain Rave
大貫妙子 / UR - The City Is The High-Tech Jazz
Dublee - Bounce
曽我部恵一 - サマー・シンフォニー
Rammelzee Vs K-Rob - Beat Bop

'Cyclichedelic Mix' by Eucalypso


さいとうりょうた君の個展オープニングに参加させていただきました。当日、画廊というよりカウンターもある居酒屋風+ミラーボールと提灯もある空間で、来ていただいた皆さん、他のDJの方々の選曲共々、楽しい時間を過ごせたので、ひさしぶりにプレイリストをUPしてみます。展覧会は2週間やってますので、興味のある方は足を伸ばしてみてください。

ソフトクリーム/渦巻き/夏がお題だったので、最初はもっとユルいダブやサイケっぽい感じで考えていたんですが、サイケ→個人的にハウスを感じる民族音楽寄りのロックという風に解釈してみました。ホルガー・チューカイもイーノ&バーンもキックが4つ、イーブンに刻んでます。スチールバンドの2曲はややムリヤリですが・・。

ジェネラル・ストライク(デヴィッド・トゥープ&デヴィッド・カニンガム&スティーヴ・ベレスフォード)は最近、聴き直して、もしかしたらライフタイム・フェイヴァリットになるかも?という予感がしました。こういう安易な書き方はよくないと思うんですが、実際ナカナカないことなので。ヴォーカル曲は、サン・ラの2曲のカバーはもちろん、オリジナルの「My Other Body」の深い憂いをたたえたミニマル・ソウルも出色です(こちらでヴォーカルもアレンジも違う「My Other Body」のシングル・ヴァージョンが試聴できます)。僕が勝手に標榜している「壁紙音楽」のエッセンスを凝縮したような音楽で、ポスト・ロックやエレクトロニカやアルゼンチン音響派を通過した、いま生まれたての音のようにも聴こえます(こんな素敵な音楽を現在やってる人たちがいたら、誰かそっと教えてください)。デヴィッド・カニンガムによる、残響成分が少ないデッドなダブ処理を施した録音が、何より音楽の「質」を決定しています。デヴィッド・トゥープのソロ作はいくつか聴いて、正直、気軽なリスニングとしては楽しめないものも多かったのですが、これは耳通りがよく、ストレンジなのにナチュラルボーンなポップなのです。

僕が持ってるのはPianoから90年代に再発されたCDで、ジャケは淡い色調のポストカード・エキゾチカという体裁ですが、1984年のオリジナル・リリースはカセットテープで、このようなロシア・アヴァンギャルドなデザイン。ユニット名も文字通り、全国規模のストライキ=労働争議ですから、かなりポスト・パンクな政治色が強いパッケージングです。もともとシリアス・ミュージックとして作られたがゆえに、ただの弛緩した「壁紙音楽」ではない強度がある、とも解釈できそうです。



後半は、キャバレー・ヴォルテールのアクフェン・ミックスからエディット/カットアップ・ハウス〜アシッド・ハウスという流れ。せっかちで畳みかけるような神経症っぽい曲が多くなってしまったので、セオ・パリッシュの「Summertime Is Here」みたいなまったり夏な曲はこの流れには入れられず。残念。Tofubeatsの「Edit」集は、この曲以外に、Shoko Nakagawaの「I Wanna Sherbet You」の構成力と過剰なキレ方に新世代のムチャな勢いを感じました。エディットは屍体いじりのフェティシズムを不可避的に伴ってしまうものだと思うのですが、マイケル・ジャクソンの「Rock With You」が一瞬カットインする刹那の殺傷力にハッとします。イトウヒデノブが角松敏生に捧げた(?)曲は、Tofubeatsと聴き比べると、ずっと大人のエディットに聴こえます。ホントはこの後にソフト・ピンク・トゥルースをかけるハズが、時間がなくなってかけれませんでした(ユニット名の語呂合わせ的にも今回の展覧会に合っていたのに・・)。

曽我部恵一の新曲、「サマー・シンフォニー」は、OTOTOYのフリーダウンロード(〜7.14)で聴いて、即ヘビロになった曲です。ベースラインに、ファラオ・サンダースの「Love Is Everywhere」が控えめに使われています(おそらく高音の周波数をカットオフして輪郭をぼやかしてるのでは?)。この有名なベースライン、僕が知る狭い範囲でも、竹村延和、Calm、最近だとOlive Oilがサンプリングしていて、どれも名曲になってしまうという万能調味料みたいなネタです、笑。サニーデイ・サーヴィス時代はまったく聴いてなくて、ソロ作しか聴いてませんが、曽我部さんがときどき作る、黒人音楽寄りの曲が好きです。日本人がベイビーとかブラザーとか連呼すると気恥ずかしくなって首を垂れてしまうクチなのに、曽我部さんの歌はサラリとしていてイヤミなく耳に入ってきます。リリックとソングライティングのシンプルな絡み、「アイスクリーム、とろけるような、暑い暑い夏に、アイスクリーム、届けるつもり、暑い暑いやつ」というパンチライン、ブレイクビーツと波の音のシンクロ。季語を使った俳句的なテーマ設定を余すことなく曲に活かしたクラフトマンシップの高さを感じました。



最後は、R.I.P ラメルジーということで「Beat Bop」。一応、エクスキューズすると、このような行為は、本来卑しいものなのかもしれません。僕は選曲というのは、そのとき感じたことを率直にアウトプットしたり句読点を打つことだと愚直に思っています、うまく行ったかどうかは別にして(聴いて不謹慎だと思われた方、申し訳ないです)。音数少ないのにとぐろを巻くような酩酊感。ダビーでスペーシーでサイケデリシャス。大音量で聴くとやっぱり凄い、ワンアンドオンリーの音源だと思います。アフロ・フューチャリズムなどと言われる黒人音楽が内包する宇宙感覚、ことこの音源に関しては、サン・ラやファンカデリックなんかともまた違うものを感じます。黒いんだけど白い、白いんだけど黒い。ダウナーともアッパーとも言い難し。何度聴いてもわからない。

ラップパートはピンプとスクールボーイとの掛け合いですから、本来、宇宙を描写したりイメージした音楽ではないのです。もっとベーシックな日常生活に地に足をつけたコンシャスで教育的なラップのハズなのに、出来上がったものはこんなにブッ飛んでしまった、という「計らずしも」感がこの曲が「TEST PRESSING」とジャケに描かれている理由なのかもしれず(ググってリリックを探しましたが、あいにくどのサイトも権利関係の問題なのか?消えていて、見つけられませんでした)。BPMが遅いので、テープを遅く再生したような引き延ばされたタイム感覚が、粘っこいラップのスタイルと相まって独自のサイケ感を醸し出してる、というのが案外シンプルな真相かも、とも思います。先日のDommuneで、コンピューマさんが電子音とミックスして、この曲をかけてたのもカッコよかった。ラメルジー本人がバスキアとの関係で、この曲を生涯気に入ってなかったというのも、この追悼番組で遅まきながら知りました。



気づけば、上記の通り、日本人ものが多かったのですが、さいとう君の今回の展示も駄菓子屋風というか、水木しげるのお化けが出てきそうなジャパニーズ・スタイルだったので、後付けですがアリではなかったかと手前味噌的に思ってます。なんでこの曲がここに?とか、全体的にチージーで安っぽいね、などと感想を持たれるかもしれないし、クラブの現場でやってるDJの方からすれば、とっちらかったイビツなプレイリストだと思いますが、快感原則に忠実にやると、こうなってしまったのでした。あしからず。