2007/12/08

Radio Sound Painting 2007.12

12月度のプレイリストはコチラです。


Jjplvdnb - Jean Jacques Perry & Luke Vibert

ここ数年ディスコやアシッドに傾倒していたルーク・ヴァイバートと70代のジャン・ジャック・ペリーのコラボレーション。コラボやフィーチャリングにはいい加減飽き飽きしている自分でも、この組み合わせには必然を感じました。以前、ルークとギタリストのB.J.コールがコラボした作品(双方の相性がよいエキゾな佳作)は、デヴィッド・トゥープが仕掛人というか二人を引き合わせていたんだけど、今回も影の立役者がいるのだろうか。そんな余計な詮索はともかく、「Moog Acid」というタイトル通りの明快なキャラクターが刻まれた作品です。いわゆるアシッド色はやや薄かったかも。シンセサイザーの活き活きとした「うたってる」響き、繊細でいて豪快なアーティキュレーションはやはりサンプリングでは出せないと当たり前のことを再認識させます。アルバム中、最も「エレクトリカル・パレード」を彷彿とさせるこの曲を選びました。

Remix Of Nothing (Cut Off Intro) - Daedelus

デイデラスの新作から、某大御所クルーナーのボーカルをサンプリングしたキャッチーな「Admit Defeat」と迷って、こちらにしました。「Make some noise!」という掛け声、歓声、ヘッポコなエレクトロのリズム、8ビット・ゲームのエフェクト音、エキゾティックなストリングス、8分のOddなベースライン、「This is it. This is what I say. The remix this is. This is its. The remix」というデイデラス本人の(?)ボーカル。どれもがレトロでアウェイですが、これらを一つにまとめあげ新鮮に聴こえさせる手腕は彼だけの個性でしょう。この言葉遊びは「このリミックスには原曲はない」というタイトルと呼応して、ウィットに富んでいます。ルーク・ヴァイバートもデイデラスも、ずっと陽性のユーモアとウィットのあるインティメイトなインストゥルメンタルを作り続けている。そこに惹かれます。

Dancevader Biber-Hill Pop - Kiiiiiii

僕はまったくノーマークだったのですが、ジオデジック下城さんと某Jで雑談してる時に「いままたスカムがキテますよ」と教えてもらったのがKiiiiiiiの「Al&BUM」でした。カラフルな音色、巧みな展開、歌心を満載。試聴してすぐ気に入り紹介することになった次第。スカムかどうかはわからないけれど、なんとなく僕も大好きな映画「ゴースト・ワールド」を思わせるジャンクでトラッシーなガール・パワーを感じます。ハルカリやバッファロー・ドーターやピーチズやチック・オン・スピードや懐かしいリオのような活きのいいガールズ・ポップとして、素直に聴くのが一番かと。ガーリーと書くと、一気に90年代にリワインド。ライオット・ガールズも遠くなりにけり。そういえば、スリッツとエイドリアン・シャーウッドのジョイント・ライブは行けなかったけれどどうだったんだろう? やはりレゲエ色が強かったんだろうか。さておき。「Al&BUM」の中でも特にオールドスクール・エレクトロ色の強いこの曲を選びました。モロにグランドマスター・フラッシュなフロウ、ダースベイダーのメロディも中盤で登場します。他に「Hot But Milky Like Hot Milk」「Kiiiiiii For Any Occasion...Or Just For Fun !」「Hello Darkness」(この曲はストロベリー・スイッチブレイドそのもの・・)も素晴らしい楽曲です。音楽を楽しんでるのが直に伝わってきます。DJの時はマイケル・ジャクソンをかけるそう。いいなぁ。昔から女の子の等身大で真っ直ぐでウソのない表現には脊髄反射的に反応してしまいます。

サマー・クリアランス・セール - Best Music

HIM&ウルトラ・リヴィングのライブに行った際、ライターの福田教雄さんにサンプル盤をいただきました。なんとも脱力なジャケと中身にノックアウトされました。あえて何度も取り出して聴くかと言われればノーなんだけれど、存在自体がポップアートな貴重な一枚。モンドやミューザック(MUZAK)として分類されそうですが、こういうのは作り手がフザけて冗談っぽくやるのではなくマジに振り切れないと(今の時代感としても)面白くありません。小田島等さんはすこぶるマジなんだと思います。細野しんいちさんの音作りも堂に入ってます。インナーに寄せた福田さんの解説がよかったです(是非、読んでみてください)。そういえば、アトムハートもスーパーマーケットの音楽をテーマにアルバムを作りたいと数年前に言っていた。普段、センスが良いと思い込んでる僕らの音楽生活を反証するために。ユーモアというのは批評精神そのもの。僕の中では、KiiiiiiiもBEST MUSICもつながっています。

15 Step - Radiohead

「In Rainbows」の中から冒頭のエレクトロニカ色が唯一強いこのナンバーを選びました。今回の選曲はmessyでケオティックな曲ばかりです。最近、「Radiodread」や「Exit Music」といったカバー・アルバムで、レディオヘッドの楽曲の良さを再認識していたところです。 レゲエになってもR&Bになっても、どう料理されても芯にメロディが残っている。こういう音楽はやはり強い。Hostessにいただいた資料によると、「In Rainbows」は120万ダウンロードを記録し、平均4ポンド(950円)をユーザーが支払ったそうです。関連エントリーはコチラ

Ether - Jay Tram

マイアミのベータ・ボディガの近作は、この作品とかEpstein & El Conjuntoもそうだけれど、柔らかい、断片的な心象風景、サウンドスケープというか身の回りのサラウンドスケープを描き出すような方向性にシフトしてきてるのかなと思いました。一方で、ヒップホップという核は持続しています。Jay Tramは、選ぶ音にロックとジャズがちょうどよく混在していて、エーテル=Etherというこの楽曲は、空気や水のような浮遊感とエレクトリック・マイルスのようなフリーフォームを感じさせます。あと、ここ最近の潮流としてのサイケデリック色が濃い。ラストの「Work Song」はメディテーション・ミュージックのような酩酊感があります(短いのが残念)。内側に向かいつつも自閉しないで開かれているというか、全体としてはどこにも行き着かない3分くらいのスケッチを集めたような感触は、スペンサー・ドーランにも通じるものがあります。と、思わず分析してしまいたくなりますが、こういう傾向はしばらく続きそうです。

Umoja (Unity) - The Jahari Massamba Unit Feat. Karriem Riggins Trio

今年聴いたアルバムの中でもガツンと来た一枚(僕は、今年のベスト的なものがあまり好きではないし、そこまで多くのアルバムを聴き比べてもいないので、あくまで、現時点での、というくらいの軽い感じでとらえて下さい)。もはや埃っぽいスモーキーなブレイクビーツというカテゴリーも必要ないようなマッドリブ/YNQの新作です。DJやトラックメイカーがジャズ・ミュージシャンと組むと、結果はあまりよろしくないというか、予想以上の化学反応は生まれにくいというのが僕の正直な感想ですが(こちらの期待値が高すぎるのかもしれません)、このアルバムにあふれた才気はそういう邪心を軽く超えた音楽としての極めて真っ当なプレゼンテーションが為されています。フェイクがフェイクを超える瞬間というか(ブレイクビーツがフェイクで生ジャズが本物だとかそういうことではなく)、オーセンティックとエキセントリックの狭間を自由に行き来することが、時代と並走する現在進行形の音楽の特権でもあり、また、自明の命題だと思いますが、ここにはその一つの解答があるのではないかと言ってしまいたくなります。まさに、イエステデイでニューなクインテットというコンセプトを具現化した内容。「Upa Neguinho」や「Barumba」や「Bitches Brew」といった耳慣れたナンバーのカバーも耳を引きますが、ジャズ・ドラマー/プロデューサーのカリム・リギンスがスリリングなドラミングを聴かせるこの曲を選びました。

その他、Jonathan Krisp、Sub Version、Alf Emil Eik、The Durutti Column、Michael Fakeschなどがかけられなかったので、また次回。

0 件のコメント: