2010/01/30

FEEDという限りなくニッチな居場所の話

「FEED」というカフェの通常営業時間内にやってるイベントについて、とりとめもなく過去を振り返るエントリーです。とても個人的でつまらない話ですが、よろしければ、おつきあいください。

その昔、IDEEが経営していたスプートニック・パッドというカフェで不定期にやらせてもらったり、学芸大学にあったOFFICEで月一でやらせてもらうようになったのが、カフェとの最初の接点です。その2店舗がクローズした後は、ピンクのネオンサインがいかにも夜の止まり木的なバーっぽかった改装前の外苑前SIGNで月一でやるようになります。このへんの記憶がアイマイで、しかも、何年に始めたかとか時系列的なことを見事に忘れてますが・・。

その後、同じビルにある1階のSIGNと5階のOFFICE、2つのカフェを掛け持ちして月2回やることになります。余程ヒマだったんでしょうか・・汗。さすがにこの時期は体力的にしんどかったので、どちらか一個に絞ろうということになり、自分の音はOFFICEの方が合ってると近しい友人に言われたり自分でもそうだよなと思いつつ、色々考えた末に、5階まで階段で上がることでフィルターがかかるという意味でもややスノッヴで大人の遊び場めいたOFFICEではなく、SIGNで続けることにしました。なぜ、SIGNにしたのかと言うと、身も蓋もない理由ですが、単純にお客さんが多かった、からです、笑。

いまはもうそんな対抗意識はないですが、SIGNで始めた頃はまだゼロ年代初頭のカフェ・ブームの残り香があり、いわゆるカフェ・ミュージック、お洒落なボサノヴァやフリー・ソウルみたいな音楽は意地でもかけないゾ!というよくわからない自負心があり、また、そういうわかりやすいカテゴリーじゃない音を持ち込むことに存在意義を勝手に感じていました。一度、SIGNでラップトップを持ち込んでアシッド・ハウス・セットを一時間以上流すという無茶をやったこともあります。その時はさすがにお店から五月蝿いとお叱りを受けました。なぜそこまで暴走してたんでしょうか・・よく覚えていません・・・。

そんなこんなで月日が経ち、カフェ・ブームはあっという間に過ぎ去り、夜遊び族や怪しげなクリエイターなどのトッポイ人種ではなく、青山界隈のビジネスマンやOLがメインの客層になっていき、SIGNが改装されて、夜っぽい内装が昼っぽいクリーンな内装になり、どんどんフラットな状況になっていくのを実感するようになります。改装でDJブースが2階に上がりスペースに余裕ができた分、お客さんとブースとの距離ができて一体感がなくなり、「この曲、なんですか?」と聴きに来るお客さんがいなくなったのは、ちょっと寂しい変化です。単なるBGMとはいえ、公共空間で音を流しているのだから、お客さんに届いてナンボだと、おこがましくも思ってますから。

音楽を巡る時代状況としては、著作権のせいでいつまでもブレイクできないインターネット・ラジオを一足飛びに飛び越えて、音楽をかける場所・空間の持つヒエラルキーを無効化する最終兵器USTREAMが昨年出現し、いつでもどこでもプロでもアマでも自由に音楽を流して享受するという風通しのいいカルチャーが産声を上げ、従来からあるクラブやライヴハウスの現場とストリーミングやポッドキャスティングの現場に二極分化しつつあるのは、ご存知の通りです。この不況下で商業空間と音楽とのマッチングが難しくなっていることも確かでしょう。

クラブの血で血を洗う政治社会(やや大げさ)に入り込めない自分のようなノンポリで付き合い下手な人間が、オタクDJよろしくカフェというニッチな場所でお気楽に音楽をかけるという行為にもはや意味って見い出せるのかな?と思ったりもします(実際は、ノルマはないけどやるからにはお客さんを呼ばなくちゃとか、ブッキングとか、お気楽なりに苦労はあるわけですが、それはさておき)。いつでも止めていいミニマムな居場所としての「FEED」を、これからどう続けていけばいいのか、けっこう正念場な気もしています。

ちなみに、「FEED」という名前は、カフェという飲食店で食べたり飲んだりしながら聴く音楽、そこで音を供給するということ、地域のラジオやテレビの放送、ウェブ・サイトやブログが概要を吐き出すフィード、という即物的な意味合いやシンプルな響きが気に入ってつけました。「FEED」でかかる音楽についてうまく言い表せる言葉を思いつかず、クラブ・フライヤーのようにジャンル名を書き連ねていく紹介の仕方を避けたいんだがどうしたものだろうと思っていたところ、昨年、Twitter経由で「壁紙音楽」という便利な言葉を思いつき、頭がスッキリしました。当分は、この名称を掲げていくと思います(!?)。

最後に、その時々でレギュラーやゲストでDJしてもらったりサポートしてもらってる仲間や友人、お店のスタッフの皆さんには感謝です(こうしてエントリーに起こすと、自分にとってのゼロ年代の少なくとも何パーセントかは「FEED」だったんだなぁ・・)。

もし、このエントリーの続きを書くとしたら、お洒落な記号としての音楽の風化について、ですが、また、それは機会があればということで。

SIGN GAIENMAE|TRANSIT GENERAL OFFICE INC.
FEED告知、または壁紙音楽宣言

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