30ドルの自動伴奏ソフト、Songsmithがマイクロソフトのネガキャンかと言われるほどのひどい出来映えで話題を呼んでいる。YouTubeにはSongsmithによる有名曲のリミックスやマッシュアップが大量にアップされていて、ヴォーカルと伴奏のHorribleなギャップに笑うべきかどうか、こちらのキャパを試される。
それらを聴いて思ったのは、マイクロソフトはスーパーやコンビニといった業種にマーケットを絞ってこの製品を販売すべきじゃないかということ。これは、究極のスーパーマーケット・ミュージック=ミューザックの自動生成マシンなのだ。人件費やスタジオ代をかけずに、原曲を読み込ませればお手軽にチープで気の抜けたアレンジを吐き出してくれる。現状の完成度だと逆に人の耳をそばだたせてしまうので、退屈なスーパーのBGMとしては失格かもしれないが・・。
2007年にYouTubeを使ったバイラル・ヴィデオとして成功した「Chocolate Rain」。原曲からブルースのコード進行とのマッチングの良さは予想できるので、あまり意外性はないかも。オリジナル
この「Beat It」はファンク・ヴァージョンとしてかなりイイ線いってると思う。サビにおけるマイケルのヴォーカルとベースとエレピの絡みは予定調和的な和声の解決を断固拒否していてクール(このじらされ方がファンクだと言えなくもない)。オリジナル
同系統ではドゥービー・ブラザーズの「Long Train Runnin'」も違和感がない。やはりサビのコーラスで盛り上げるべきところで気の利いたコードチェンジがいつまでたっても訪れず、イヤな汗を背中にかきそうになる。それにしても、この曲ってこんなにブルーアイドソウルだったのか。オリジナル
マーヴィン・ゲイの「What's Going On」の流麗でマーベラスなコード進行をまったく解析できないSongsmithの完敗。和声の完膚無き破壊、黒人音楽への冒涜・・真面目な音楽ファンは発狂しそうになるかも。同様の作例としては、Take On Meがある。オリジナル
Songsmithはあまり複雑な和声進行の曲には向かないようだ。TLCの「No Scrubs」はまんまスティーリー・ダンなキーボード・リフがスムーズにヴォーカルに寄り添い、一本調子ながらうまくハマっている。オリジナル
かといって、単調であればいいわけでもない。同じR&Bでも、ビヨンセの「Single Ladies」は豪快に空振りしている。オリジナル 最近のR&Bやダンスホールに見られる、ほとんど調性感のないスカスカなダンス・トラックはSongsmithにとって未知の領域だ。
ビーチ・ボーイズのとろけそうなメロウ・ヴァイブの白昼夢が、牧歌的かつ神経症的な80'sテクノポップに。この解釈は斬新。ここでもサビのコーラスがしっかりシカトされてるのはご愛嬌。オリジナル
テクノに化けた系列の傑作はやはりこれかな(繰り返し聴ける、という意味で)。テンポを倍でカウントしている。単調なバックトラックが、ビートルズから連綿と続くイギリスお家芸のソングライティングの上手さを際立たせつつ、ドラマティックな強度をキープ。オリジナル
ホンキートンク・ピアノのアレンジで磨きをかけられたエミネムは、ウィットに富んだチンピラのチカーノやズートスーツに身を包んだキャブ・キャロウェイの再来のよう。ペーソスとは物悲しいおかしみであることを余すことなく伝える曲。オリジナル
優れたメロディはそれだけ取り出しても(トラックを差し替えても)、ちゃんと成立してしまうという当たり前のことをSongsmithは逆説的に教えてくれるのかもしれない・・。
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